皇帝の気迫を前に普通でいられるのは、恐らくレディーナのような狂った者ぐらいだ。
「殺れ」
陛下の冷たい声が響き渡ると同時に後ろに控えていた騎士達が一斉に押し寄せる。
男達は手も足も出ないまま捕まり、威勢だけ良かったレディーナも騎士達の手によってその後拘束された。
安心感からか、思わず地面にへたり込む。
……何か、町でもこんな事あったな。
状況は似ていても今回の方はかなり怖かった。
立てない程に。
「その者らには死より苦痛の拷問を。『いっそ殺してくれ』と懇願するような拷問にさせろ」
「御意」
陛下の指示で速やかに処理は行われ、気が付けばその場には私と陛下、そして宰相様の三人だけになっていた。
「ファン」
「はい」
「この者の部屋に皇宮医を呼べ」
「かしこまりました」
…確か皇宮医って言うと、皇族のみが掛かれるというお医者様の事じゃ…!
「へ、陛下…!?」
「何だ?」
「皇宮医…なんて、私はその様な身分ではありません!」
「………」
その言葉に陛下は一瞬何かを考えるように私を見つめ、静かに私へ手を差し伸べた。
普通ならそれだけでも恐れ多い事なのに。



