暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》




「その顔をめちゃくちゃにしてやる」


「……っ!」


「そしたら、お前にはもう何も残されていない。…いや、目を引くその髪があったか」


髪を強引に引っ張る。


「痛い…っ!!」


痛くて思わず涙が溢れてくる。


こんなにも騒いでいるのに、誰一人この場にはやって来ない。


何で…っ!?一階には誰も居ないっていうの!?



それは普通ならあり得ない事だ。


有り得ない事なのに。実際にそれが起こっている。


嫌だ…怖い……止めて…っ。



嫌な記憶がフラッシュバックする。


埃臭い暗い部屋に、伸びてくる男の手。


鋭い目つきと下品な笑い声。


お城なら大丈夫だと思ったのに……っ。


「はぁ…はぁ…はぁ…」


呼吸が段々と早くなる。


冷汗が首を伝い下へ流れ落ちる。


周りには護衛の男達がいて、とても逃げれる状況ではなかった。



「俺様に逆らった事を悔やむがいい」


レディーナは見下すように私を見た。


もうダメかもしれない。


鋭い刃が私の頬に食い込み、血が頬の曲線に沿って垂れ落ちる。


もうどうする事も出来ずに諦めそうになったその時。






「そこで一体何をしている」



一階のホールに響いたのは陛下の低い声だった。