「その顔をめちゃくちゃにしてやる」
「……っ!」
「そしたら、お前にはもう何も残されていない。…いや、目を引くその髪があったか」
髪を強引に引っ張る。
「痛い…っ!!」
痛くて思わず涙が溢れてくる。
こんなにも騒いでいるのに、誰一人この場にはやって来ない。
何で…っ!?一階には誰も居ないっていうの!?
それは普通ならあり得ない事だ。
有り得ない事なのに。実際にそれが起こっている。
嫌だ…怖い……止めて…っ。
嫌な記憶がフラッシュバックする。
埃臭い暗い部屋に、伸びてくる男の手。
鋭い目つきと下品な笑い声。
お城なら大丈夫だと思ったのに……っ。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
呼吸が段々と早くなる。
冷汗が首を伝い下へ流れ落ちる。
周りには護衛の男達がいて、とても逃げれる状況ではなかった。
「俺様に逆らった事を悔やむがいい」
レディーナは見下すように私を見た。
もうダメかもしれない。
鋭い刃が私の頬に食い込み、血が頬の曲線に沿って垂れ落ちる。
もうどうする事も出来ずに諦めそうになったその時。
「そこで一体何をしている」
一階のホールに響いたのは陛下の低い声だった。



