暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》




「今日は外が暑かったので、疲労回復効果のある特製のブレンドティーをご用意させて頂きました」


「気を遣わせてしまって申し訳ないわね」


サニーが持って来たのは冷えたアイスティー。


柑橘系の爽やかな匂いが香る。


「美味しい!」


口に広がる爽やかな味。


少しだけ酸味があって、程よく甘い。


「サニーはお茶を淹れる天才ね」



「その様な…アニ様はわたくしの事を、過大に評価されておられるみたいですね」


「本当の事よ?」


お城で働く使用人の中に、お茶を淹れるのがこんなにも上手な人物がいるなんて。



これなら是非、陛下にも飲んで頂きたい。



甘いものが嫌いな陛下でも、この甘さならきっと気に入って頂けるはずだ。



「それにしても、アニ様の髪はとても素敵でございますね。この国ではあまり目にしない色ですが、アニ様はもしかして外国の方ですか?」



「…え」



サニーが何気なく口にしたその一言に、思わず表情が固まる。


私が一体何者なのか。


それはこのお城で働く皆が、疑問に思っている事だろう。


「リリアンもそれ気になりますー!」


興味津々な目で私を見つめるリリアンに本当の事を伝えたかった。


私は特別な人間でもなく貴族でもなく、ただの平民だと。



けれど、言う訳にはいかない。



陛下が客人だと皆に言って下さっている以上は。