暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》




緊張が解けた安心感からか、思わず地面に座り込む。



パチパチパチパチ…ッ!!


「…え?」



その様子を見ていた周りが、一斉に拍手を始める。


その様子に呆然と周りを見渡していると、サニー達が駆け寄ってきた。



「アニ様!!お怪我はないですか!?」


「サニー…。これは一体何なの?」


「これは…アニ様の勇気を称える拍手でございます」


「勇気を称える拍手……」


いつも怯えてばかりいた私が、勇気を称えられ拍手される日が来るなんて。


それよりも……!


「お嬢ちゃんは、大丈夫だった?」


危険な目にあっていた女の子の事が心配だ。


「痛い……立てないよう…!うわぁぁぁぁん!!」


女の子の膝には擦り傷があった。


恐らく、馬車に驚いた拍子に膝を擦りむいてしまったのだろう。



擦りむいた範囲が広く、血が流れている。


「この近くに水場は?」


「残念ながら…。噴水のある公園であれば先にありますが、それなりに歩く距離ですので……」


傷口を洗い流し、ハンカチで止血をしようと思ったのだが。


その水場が遠いとなると、手っ取り早い方法を思わず選んでしまう。


「貴女達、少しの間だけ向こうへ行ってもらえないかしら?」


「かしこまりました」


今からする事は知られて欲しくない事。



「ねぇ、今からお姉さんがマジック見せてあげるね!」



「まじっく…?」


「マジックはね、遠い国の人がお姉さんに見せてくれた不思議な芸なの」


「面白そう…!!」


正確には、異国の使者がお城へ来られた際に陛下へ披露したマジックと呼ばれる芸で、確かその人の事をこう言っていたはず。


『マジシャン』と。


実際に見た事はないけれど、その技を目にしたメイドからはまるで魔法のように、物を消したり現わしたりさせていたと話していた。



「マリーも見たい!マジック見たい!」


「それじゃあ、今からお姉さんが見せてあげる」


そっと傷口に触れる。


怪我をしている傷だけに集中するように、力を調節して。


「何か、膝が暖かい!」


「後少しだからね」


緑色の光が膝を包み込む。


そろそろかな…。


膝からそっと手を離すとー……。



「え~!凄い!!マリーの傷治ってる!お姉ちゃんのマジック凄いね!」


「でしょ?」


大きな傷は跡すら残さず綺麗に消えていた。



これが、私が呪いと呼ぶ不思議な力だ。



どのような怪我も病気も治してしまう治癒の力。