お客様がお越しになる事を伝えられていなかったところからして、そこまで私は重要ではないみたいだが。
一応私も客人と言う事になっている。
許可を取っているとは言え、部屋に居ない事が知れたら少々面倒くさい事になるかもしれない。
「帰ろうか」
「はい」
四人に声をかけて、お城に戻ろうとしたその時だった。
「キャー…っ!!」
歓声とはまた違った声が響いた。
これは……悲鳴だ…っ!
「アニ様…っ!?」
恐怖に敏感な私は、直ぐにその状況を理解した。
幼い子供が馬車の前に飛び出してしまったようで、御者(ぎょしゃ)と睨み合っていた。
早くあの場から退かさないと不味い事になる…っ!
「どうかしたのか?」
運悪く中から顔を見せたのは、商人と思われる三十歳ぐらいの男性。
髪をワックスで上にかき上げ、見るからにお金のかかった服を身に着けている。
指につけられた沢山の指輪達が、日の光に照らされて美しく輝く。
「す、すいません旦那様…。子供が急に飛び出して来てしまって……」
商人の男性は酷く冷たい目で幼い子供を睨む。
「ひき殺せ」



