夜更け過ぎ。


宰相は資料を片手に陛下のいる執務室へと訪れていた。


「今日はあの女性と夕食を共にしたそうだな」


何の報告かと思えば、宰相は面白そうに口元を緩めた。


「あの時は忙しくて簡単な説明しか聞いていなかったが、一体どこで引っ掛けて来たんだ?お前は女に興味ないものかと思っていたが」


「………女は嫌いだ」


「じゃあ、何故ー……」


「余に近づく女など、信用ならないからだ」



甘い顔で地位だけを狙い争うような毒華達を、何度も目にしてきた。


…ーしかし。



「あの者は違った」



「…はい?」


理解の出来ない宰相は首を傾げた。



…あの目には、邪心など感じられなかった。


むしろ純粋で、この貴族社会の穢れを知らない。



だからこそ、あの者と話すとその純粋さに気持ちが和らぐ。



この国では珍しい漆黒の髪に海のような青く大きな瞳だからこそ面白そうだと連れて帰ったが。