暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》



「……本当ですか?」


「えぇ」


実際に使用人から妃になった事例はあるし、そう言った考えの人もいる。


けれど、私には分からない。


何故そこまでして、皆は陛下の妃になりたいのか。


権力を持てど、きっと幸せにはなれないのに。


リリアンは権力欲しさの為に妃になりたいと言うような子には、とても見えない。


花が咲いたように明るくて、純粋な感じの子なのに。


「私が妃になればお父様もお母様も、そしてお兄様達も。きっと……」


「リリアン?」


「……いえ。何でもありません!」


先程、目にしたリリアンの顔はどこか悲しげで。


聞こうと思ったけれど、深く踏み込むのは止めておく事にした。


聞いて良い事と悪い事もある。


これは聞かない方が良いのかもしれない。


「…えっと、後の貴女達の名前は?」


リリアンの他にもあと二人の使用人が付いていて、私は声をかけてみた。


「私はダリアと申します」


「アンナと申します」


一人はショートヘアのダリア。


もう一人は三つ編みのアンナ。


「宜しくね」