「……本当ですか?」
「えぇ」
実際に使用人から妃になった事例はあるし、そう言った考えの人もいる。
けれど、私には分からない。
何故そこまでして、皆は陛下の妃になりたいのか。
権力を持てど、きっと幸せにはなれないのに。
リリアンは権力欲しさの為に妃になりたいと言うような子には、とても見えない。
花が咲いたように明るくて、純粋な感じの子なのに。
「私が妃になればお父様もお母様も、そしてお兄様達も。きっと……」
「リリアン?」
「……いえ。何でもありません!」
先程、目にしたリリアンの顔はどこか悲しげで。
聞こうと思ったけれど、深く踏み込むのは止めておく事にした。
聞いて良い事と悪い事もある。
これは聞かない方が良いのかもしれない。
「…えっと、後の貴女達の名前は?」
リリアンの他にもあと二人の使用人が付いていて、私は声をかけてみた。
「私はダリアと申します」
「アンナと申します」
一人はショートヘアのダリア。
もう一人は三つ編みのアンナ。
「宜しくね」



