助けてもらって気が緩んでいたけど……これが本来の陛下の姿……。
冷酷で、容赦なく人を切り捨てる人。
「…くだらない。用事が済んだのなら立ち去るが良い」
冷たく言い払うと、仕事に手を付けた。
人間らしい方だと思ったのに……。
気が変われば陛下は急に冷たくなる。
気を許しては駄目よ、アニーナ…。
このお城で信じられるのは自分だけ。
それがお城での常識だって、良く知っている。
ここでは陛下が法だ。
気に食わなければ使用人でも大臣でも。それが、例え客人だとしても。
恐らく陛下は剣を向けるだろう。
陛下が私に飽きて解放するまで、逆らわず大人しくしている事が今の私にとって助かる唯一の方法なのかもしれない。
我慢には慣れている…。
大丈夫。
私は必ず生きて元のメイド生活に戻る。
「……失礼致しました」
頭を下げると静かに部屋から退出する。
陛下はそんな私に目もくれず、資料を見つめていたー………。



