それにしても、陛下って笑うんだ…。
冷たい目をなさる冷酷な方だと思っていたけれど、人間らしい一面もあるみたい。
私は動揺を悟られないように、違う言葉を口にした。
「陛下はご存知の通り私は平民の娘です。それなのに、このように良くして頂いて宜しいのでしょうか?」
殆ど脅迫に近かったけれど、それにしては随分と待遇が良い。
お部屋なんて広くて豪華だし、一人で使うには少し勿体ない。
「心配ない。そなたは余が招いた客人と言う事にしている。誰も平民の娘だとは思うまい」
「しかし…皆を騙している事には変わりありません。私は…心が痛むのです」
「心の痛みなど…直ぐに消える」
陛下のその顔は、どこか憂いを帯びて見えた。
「ですが…ッ」
「黙れ」
ズン…と身体ごと地面に叩き潰されそうなほどの重圧に言葉を失う。
その声は低くて冷たい。
身体が震え、先程まで熱の籠っていた顔が一気に青ざめていくのが自分でも分かった。



