「私は…アニ・テリジェフと申します…」
陛下よりも、この人にバレないか心配だ。
「余は仕事に戻る。夕食の時間まで好きに過ごすと良い」
「……はい」
実際、夕食の時間まであまり時間は残されていないけれど。
せっかくの休暇なので、ゆっくり過ごさせて頂こう。
「先ずはお部屋にご案内致します」
「ありがとうございます」
「テリジェフ様。わたくし共に敬語は不要でございます」
……あ。
つい、いつもの調子で話してしまった。
客人と言っても私は普通の平民だし。
陛下の評価を下げてしまったら困るので、平民である事は今は秘密にしておこう…。
到着したのは数ある客室の中でも特に豪華な部屋。
以前私が来た時よりも内装が華やかになっていて、美しい薔薇まで飾られてある。
「あちらに居ますのはテリジェフ様のお世話を担当致しますメイドのディノンでございます。何かございましたら、あちらのメイドにお申し付け下さいませ」
ラディカルメイド長の視線の先には、数名のメイド達が横一列に並んでいた。
見たことの無い顔ぶれからして、側近部では無いみたいね。



