暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》



平気な顔で人を切り捨て、凍えるような冷たい目をなさる人だとは思っていた。


けれど、この人がまさかあの皇帝陛下だったなんて……。



「別に気にするな。これまでの無礼な態度は許してやろう」


「か…寛大なお心に、感謝致します」


恐らくあの町には視察で来られていたのだろう。


けれど、例え視察とは言え、よりにもよって休暇中にあのような場所で会うなんて。


「そう言えば、そなたの名をまだ聞いていなかったな」


「わ、私の名前…ですか?」


幸いな事に、私はこれまで陛下と会った事はない。


仕事中は変装をしていたので、あのメイドが私だと気づかれる事はまずないと思う。


……でも。


名前を言ってしまったら。


流石にバレるかもしれない。


「平民であっても、名ぐらいはあるだろう?」


「わ、私の名前は……」