暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》



「お客様……ですか?」


必要以上に瞬きを繰り返す宰相様は、まるで意外な言葉でも耳にしたかのような表情だ。


「そう言えば、空きの客室は掃除されてあるのだろうな?」


「え、えぇ……。それはもちろんでございます。毎日、メイドの方達が欠かさず掃除を行っておりますので…」


「そうか。部屋はそこで良いとして後は……」


男は顎に手を当てて何やら考えている。


宰相様相手にこの様な口を聞ける人物って……。


お城の中ではそう多くはない。


「直ちに、ここへメイド長を呼べ!」


「かしこまりました」


男がそう声を上げると、宰相様は早足でその場から立ち去った。


これは『命令』だ。


宰相様に命令が出来る人物。


確か……現在この国では一人しかいない。


………はずだ。


「あの……ここまで来て何ですが、貴方は一体何者ですか?」


………お願い。違って!!


心の中で叫ぶ。


私の頭の中では既に一人の人物が浮かび上がっていた。


「ここまで来れば気が付くと思っていたが…何も知らない平民であれば仕方ない」


「……え?」


「余が…………







        この国の皇帝だ」



皇帝……。この国の…皇帝陛下…。


実際言葉で耳にすると、何を言ったら良いのか分からず言葉を失ってしまう。