暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》




……この人も私の黒髪が珍しいから、お城へ連れて行こうとするのかしら。


結局は、先程の人さらいとやる事は変わらない。


ただ……売られるか売られないかの違いだ。


「…………もし。ついて行かなければ、どうなりますか?」


「反逆とみなし、牢に入れる」



重い沈黙がその場に流れる。


この傲慢な態度。まるでこの人が皇帝陛下みたい。……実際に見た事はないけど。


皇帝陛下に逆らったわけでもないのに『反逆』とは……。


実に物騒な言葉が飛び出て来たものだ。


「………」


「アニ姉」


私がどんな言葉を返すのか、不安げな弟の姿。


もしこれで断れば。


私は反逆者となる。


この男の言葉からすると…だけど。


家族までも巻き込むわけにはいかない。


自分を落ち着かせるように深呼吸をすると、男へ視線を向けた。



「………行きましょう」


「アニ姉…ッ!」


「大丈夫よ、グラント…」


酷い顔をしたグラントを落ち着かせるように、微笑んで見せる。