暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》



そもそも、私は既にお城で働いている身。


何故、急に平民の娘をお誘いになったのかは分からないが、断る他ない。


「平民の私に機会を下さりありがとうございます。しかし、恐縮ではございますが遠慮させて頂きます」


「…何故だ?」


まさか断られるとは思っていなかったのか、返したその言葉に男は『意外だ』と言わんばかりに目を見開いた。


「貴方様がどのようなお偉い方かは存じません。しかし、平民の私如きが使用人試験を受けずに推薦で働くなど出来ません」


それだけでは恐らく理由が足りないので補足を入れる。


「それに私……お城での仕事には興味がありませんので」


せっかく機会を与えて下さったのに、この様に失礼な事を言われたら流石にこれ以上誘う気にはならないだろう。


無礼な娘として、このまま会話が終わるはず。


そう思っていたのに……。


「……ふっ…はは…っ」


頭が可笑しくなったのか。


急に笑い出した男の姿に、思わず目を丸くした。