一歩、二歩。そしてー……。
「待て」
「……」
あの男の声に、ふと足を止める。
「何でしょうか?」
どこか面白そうに、男は私へ言葉を放った。
「………城の仕事に興味はないか?」
長い沈黙がその場に流れる。
えっと……今この人。
「城の仕事と仰いましたか?」
「あぁ、そうだ」
男は、私がどんな反応をするのか伺う様だった。
他の人ならそのお誘いにのるだろうなぁ~…。
城の職は誰にでも受験資格はあるが、学のある人しか受からない。
部署によってその難易度も変わるのだが、城の中でも良い職に就こうと思うと、やはりそれなりの学がいる。
側近部もその内の一つだ。
難関と呼ばれる試験を無事に通過出来た者だけが、就く事を許される。
………まぁ、中にはコネを利用して、職に就いた者もいるみたいだけど。
位の高い官僚や大臣の推薦があれば、試験無しに就く事も可能だと聞く。
私の答えはもちろんー……。
「申し訳ございません」
『No』だ。



