暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》




私達の横を通った時にふと目にした、鎧につけられたあの紋章。


皇室の象徴である火を噴くドラゴンの姿は、アンディード帝国を現すモノだ。


つまり、先程の人達は皇室の兵士達に間違いない。


派遣されていた兵士が偶々この場に居合わせたのだろうか。


何にせよ助かったには変わりないが、私にはこうなる事を予想されていたような気がした。


しかし、気にしても仕方ないと、私は弟の方へ目を向けた。


「この人達に任せて、私達は帰りましょうか」


「だな」


もし、この人がアンディード城で勤める役人なら。


次に会った時は、どこの誰か分かるはずだから。



と言ってもまた会える確信はないので、最後にもう一度お礼を言っておこう。


「何はともあれ、助けて下さりありがとうございます」


深々と頭を下げる。


しかし、男の声は聞こえてこない。


頭を上げると男はどこか驚いた表情をしていて少し気になったものの。


私は助けてくれたその男に背を向けた。