男性の手を丁寧に退かすと、弟の方へ顔を向ける。
未だこの男を警戒したように、鋭い目つきで見つめている。
「…それで、そこの子供」
「こ、子供……ッ!?」
弟は男からの呼び方に、顔を驚愕させた。
「他に仲間は居なかったのか?」
「そいつらの仲間はあと2人いたけど、取り合えず気絶させた」
その答えに思わず安心する。
弟は相手が悪い人さらいと言えど、殺しはしなかったみたい。
けれど、ホッと胸をなでおろす私の前に立つその男は、酷く冷たい瞳をしていた。
「せっかく生かしたのなら、後でじっくり拷問にかけるとしよう」
………え?
男がまるで指示をするように叫ぶと、どこからともなく現れた頑丈な鎧に身を包んだ男達は、私達を横切って奥へ進んだ。
あちら方は、先程私達がいた場所だ。
……と言う事は、先程弟が気絶させた男達のところへ向かったのだろうか。
それよりも…。
本当にこの人は一体何者なんだろう。



