暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》




男性の手を丁寧に退かすと、弟の方へ顔を向ける。


未だこの男を警戒したように、鋭い目つきで見つめている。


「…それで、そこの子供」


「こ、子供……ッ!?」


弟は男からの呼び方に、顔を驚愕させた。


「他に仲間は居なかったのか?」


「そいつらの仲間はあと2人いたけど、取り合えず気絶させた」


その答えに思わず安心する。


弟は相手が悪い人さらいと言えど、殺しはしなかったみたい。


けれど、ホッと胸をなでおろす私の前に立つその男は、酷く冷たい瞳をしていた。


「せっかく生かしたのなら、後でじっくり拷問にかけるとしよう」


………え?


男がまるで指示をするように叫ぶと、どこからともなく現れた頑丈な鎧に身を包んだ男達は、私達を横切って奥へ進んだ。


あちら方は、先程私達がいた場所だ。


……と言う事は、先程弟が気絶させた男達のところへ向かったのだろうか。



それよりも…。


本当にこの人は一体何者なんだろう。