危険を伴うけれど仕方ない。
それ以外に方法がないのだからー……。
私は一呼吸置くと、男達が支度に気を取られている隙を見計らって、全力で走る。
幸い、手足は自由で縄がされていなかった。
「誰か……ッ!誰か助けて……ッ!!」
薄暗い路地の中を必死に叫ぶ。
足の遅い私が捕まるのは時間の問題かもしれない。
お願い……ッ。誰か来て……ッ!!
心の中でそう叫んだ時。
運が良いのか悪いのか。
捜しに来てくれたグラントと再会した。
「グラント……ッ!」
「アニ姉、一体どこに行ってたんだよ…!しかも、あり得ないと思っていたこんな場所にいたし…」
嬉しいけれど今は再会を喜んでいる場合じゃない。
「グラント。見ての通り追われてるの…!話的に私を売るつもりだったみたい……。今は逃げましょう!」
『取り合えず、今は逃げ切って近くにいる兵士か騎士に助けを求めた方が』……と告げる私に、グラントは追いかけてくる男の方へ身体を向けた。
「ちょっと…グラントッ!?」
「俺がここでアイツらを食い止める。念の為を考えて木刀だけど一応持ってるし」
「それじゃあ、グラントが危ないわ……ッ!」
相手は大人で、グラントは子供なのに。
「このままじゃあ、二人とも捕まって終わりだ。アニ姉は役人をここへ呼んできてくれ」
確かにそれもそうだ。
足の遅い私と足の速いグラント。
グラントはきっと私のペースに合わせてくれるから、そのままだと捕まってしまう。
仮に役人に話したとしても、信じてもらえるか分からない。
世間では、人身売買が消えたと思われているから。



