…………最悪な事になった。
隠すものを失い、私の黒髪が露わになる。
いつも偽物の金髪と同様に着用していた眼鏡も家に置いてきてしまったので、まさにそのままの姿の私を男達に見られてしまっている。
………まぁ、残念な顔には変わりない。
逆に攫う価値もないと諦めてくれるのでは…と淡い期待を抱いたが。
「ほう……。これは思ったより上玉をゲットしたみたいだな」
「しかも、この娘……。黒い髪をしてやがる!これは高く売れるぜ」
そう言って歓喜の声を上げた。
全く諦める気は無さそうだ。
と言うか、この男達はやはり私を売るつもりなのだ。
………怖い。
あの時の記憶が思わずフラシュバックする。
連れ去られ、誰にも見つけてもらえず。このまま売り飛ばされるんだー……と絶望したあの時。
幸い助かったからこうして生きているが、私にとってその日の出来事はトラウマでしかない。
先程の男が息を切らして戻って来た。
「おい……ッ!早くここを離れねぇとやべーぞ。役人がうろついてやがる」
「……ッチ。今日はここまでか」
(………役人?)
「そろそろ引き上げるぞ」
この町にはお城より派遣された兵士や騎士達がいる。
その数は少ないものの、こうして見回る時間がある。
このまま…連れ去られるわけにはいかない。
役人が近くにいるのなら、そこまで走って助けを呼ぶ方法もある。
けど、それは……途中で捕まってしまったらアウトだ。



