暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》




そして、気に入ったものをいくつか購入すると、お店を後にした。





気が付けば、十五時……と丁度おやつの時間になっていた。


「何か甘い物でも食べる?」


「それなら俺、良い店知ってる」


そう言ってグラントは、案内をするように前を歩き始める。


十五時と言えど町はまだ混みあっていて、簡単にはぐれてしまいそう。


………って。


グラントの姿が見えない。


「ちょっと、グラント…ッ!?」


必死にグラントを捜す。


すると人混みの中にグラントの姿を発見した。


しかし、人が多くてそこまで辿り着かない。


手を伸ばせば届きそうな距離にも関わらず、人が割込み邪魔をする。


グラントも私がはぐれている事に、未だ気づいていない。


あと少し……。


そう言って、再び手を前に伸ばした時だった。


グイッ。


「きゃ…ッ!」


それは一瞬の出来事だった。


お店とお店の間に出来た薄暗い路地に、吸い込まれるように身体を引きずり込まれてしまった。


嫌な記憶が脳裏に過る。


「…だ、誰…ッ!?」


分かってはいたけれど、恐怖を表に出さないように叫ぶ。


「おいおい。命が欲しければ口を閉じている事だな」


「本日初の収穫~!そこのお前は周りに人がいないかちょっと見て来い」


「了解」


私を裏路地に引きずり込んだのは、男の三人組。


どれも体格が良くて、服はそれなりに上等。


手付きはどこか慣れている……。


この人達…人さらいの常習犯ね。


未だにこんな人達がこの町にいたなんて。


幸い弟が貸してくれたフードのお陰で、こちらの髪には気づいていない。


しかし、ほっとしたのは束の間だった。


「フード被ってちゃ~顔が分かんねえ。ブスだったら値も下がるって言うもんよ!」


そう言って、強引にフードを取る。