暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》








久しぶりにやって来た隣の町は、以前来た時とは比べ物にならないぐらい活気が増していた。


「うわ~……凄い」


思わず目の前の光景に声を漏らす。


まさに『人!人!』と言った感じで、直ぐにはぐれてしまいそう。


国境近くの町と言う事もあって、他国の文化を取り入れた建物や、露店に並ぶ輸入品は実に面白い。


まさに、目を引くものばかりだ。


「グラント待って…」


昔、この町に来た事があると言ってもこんな人の多い状況の中グラントとはぐれてしまったら、きっと迷子になってしまう事間違いない。


はぐれないようにグラントの腕に手を回して、町の観光を堪能する。


見て歩いていると、町の一角にあるお店を発見した。


「ねぇ、あのお店に入っていい?」


「別に良いけど」


観葉植物や鉢物のお花が店先に飾られたお洒落な外見がとても素敵なお店の中へ入る。



店内の天井からは花を乾燥させたドライフラワーが吊るされてある。


「凄い……こんな物まで売ってるのね」


思わず種類の多さに感動する。


「花の何がそんなに良いんだ?」


グラントはやはり詰まらないのか。


不思議そうな目で私を見ていた。


「ふふっ…。いずれ分かるわよ」


私としては異国の珍しい花まで置いてあって、かなり楽しいけれど。


……あ、この花お城の雰囲気にピッタリかも。


丁度会議室の掃除をしていた時、その花瓶に似合う花があれば良いなー…と思っていたところだ。


「何、それ買うの?」


「良いなぁ~って思って」


「ふ~ん…」


「でも、駄目ね」


「何で?」


「持って帰るまでに、きっと萎れてしまうわ」


本当は持って帰りたいけれど。


枯れた花を持って帰っても仕方ない。


………枯れた花?


「そうだわ!」


枯れた花なら、持って帰っても問題はない。


私はそうと決まるとドライフラワーの置いてあるコーナーへと向かった。