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「まだ朝の五時かぁ~…」

いつも通りの時間に起きてしまった私は、部屋の窓を開けると早朝の気持ちいい空気を吸う。

メイドの生活に慣れてしまうと、休日であってもいつもの時間に起きてしまう。

二度寝する気分にもなれないのでそのまま一階へ下りると、仕事着に身を包んだ父がリビングにいた。

「お父さん、おはよう」

「アニーナ。相変わらず起きるのが早いんだな!」

父は鞄の中身を確認しながら、そう冗談ぽく笑った。

「それを言うならお父さんもね」

「ははっ。それもそうだな」

私の言葉に苦笑しながらも「じゃあ、行ってくるよ」と、父は家を出て行った。

父の居なくなったリビングは一気に静寂に包まれ、どことなく寂しさが増す。

「何をしよう…?」

いつもなら、夜勤の人と交代して掃除や朝食の支度を手伝う時間だけど…。

流石に実家でそのような事は出来ないし、ミーティングも無い。

「時間があるし、朝食でも作ろうかな?」

冷蔵庫の中はそれなりに材料が揃っているから、どんな料理でも出来そうだ。

何なら皆の弁当も作れそう。

―――そうだ…!




六時半を回ると母を始め、眠たそうに目を擦る姉と弟がリビングに姿を見せた。

「何か良い匂い~」

「あら、アニーナが作ってくれたの!?お母さん助かるわ~!」


興味津々の姉に喜ぶ母の姿。


「って言うか、私より料理上手くなるの止めてよね~!」


その出来栄えに、姉は頬を膨らませた。