「アニーナ…!手紙だけ寄こして…長い間どこに行っていたのよ!」

怖い顔をしながら私に詰め寄ってくるのは、久しぶりに会うアイルさんだった。

「実家で色々とありまして…ご迷惑をおかけしました」

コーヒーの件といい、アイルさんには沢山迷惑をかけてしまった。

「皇帝陛下から『まだ帰ってきてないのか』って尋ねられた時は、本当生きた心地がしなかったわ!」

「はは…」

冷酷な暴君皇帝。それが一般的な陛下のイメージだから、そう感じるのも仕方ない。

以前の私も、きっと同じように思っただろうし。

「それにしても、驚きよね〜。あれだけ陛下が寵愛していたお妃様が、急に居なくなるなんて」

昨日の事なのに、もう情報を仕入れているなんて、流石は噂好きなアイルさんだ。

「それはもう…凄く寵愛してたのよ!貴女は居なかったから知らないと思うけど、他のメイド達にも人気があってね。姿を消してからは、お妃様付きのメイドが探し回ってるって」

え!?そのメイドって、もしかしてサニー達なんじゃ…。

「特にリリアンっていうメイドは、凄く探してるらしいわ。調べても何も出てこなかったって言ってたし、不思議な話よね〜。急に現れ、急に消えて」