「まだ目を覚まさないのか?」

事件が起きて一週間が経とうとしていた。

それなのに、アニは未だ目を覚まそうとしない。

「アニ様を診ている医者によると、疲労によるものだろう…と。どこにも異常が無く、眠っているだけだと言っていた」

報告の為、執務室を訪れていたファンもどこか表情が暗い。

確かに今回の事件は、宰相として頭の痛いものではあるが。

「アニを襲おうとしたあのメイドは、お城のメイドでは無いと言ったな」

「あぁ。調べたらシェパード家のメイドだと発覚した」

歴史ある貴族、シェパード伯爵家。

商売で得た大量の資金と大きな発言力は、皇室にとって厄介な存在だとは思っていたが……良い理由が出来たな。

「事件を起こしたメイドは拷問して、シェパード家との関与を吐かせろ。誰から指示をされたのか、何の目的だったのか。もし吐けば減刑し、命だけは助けてやる事も伝えるのだ」

「それなんだが、関与はほぼ確定で良さそうだ。アニ様を庇ったメイドから、毒入りチョコとシェパード家からの手紙が提出された」

確定なら話は早い。

「拷問で関与を吐かせ次第、シェパード家の人間と使用人を即刻捕らえよ。証拠があるのなら問題無い」

爵位の剥奪と財産の押収。そして、過酷と呼ばれている辺境の地で、罪人として働かせる。

命を取らないだけ、優しい処罰だ。

「分かった。しかし、アニ様を庇ったメイドはどうする?シェパード家の人間らしいが…」