暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》




何も伝えていなかったから、いきなりの里帰りに驚くだろうなぁ。


実家のドアを開く。


「あら、貴方今日は早いのねー……って、アニーナ!?帰って来たのね」


「ただいま」

私の姿を見るなり、母は涙ながらに私の身体を抱きしめた。


まるで生き別れた娘にでもあったかのよう…。


「向こうは大丈夫なの!?変な人とか…いない?」


「お母さん私なら大丈夫だよ。あそこならどの場所よりも安全だし、普通のメイドではない私に手を出そうとする人もいないから」


「そう…?あ、エレナとグラントは二階の自室にいるから、先に挨拶して来なさい。二人とも貴女に会いたがっていたから」


「分かった」


軋む階段を上がる。


私には二人の姉弟がいて、今年二十歳を迎える姉のセレナと五つ下の弟グラント。


驚かそうと思って、ノックもせずに部屋へ入る。


「グラント?もう、ノックぐらいしてよねぇー……」


机に肘をつき本に集中する姉は、私の存在に気付いていない。


私を弟のグラントと勘違いしているみたいだ。