暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》


お父様は皇室との強い繋がりを望んでいたから、妃になれば私を見てくれる。

優しい眼差しを向けてくれるのではないか。

そう信じて、配属された部署でも一生懸命頑張っていると、ある日チャンスが訪れた。

陛下が連れてきたお客様のお世話係に決まったのだ。

上手くやれば陛下の目に留まるかもしれない。

妃に……なれるかもしれない。

大切なお客様だと聞いていた相手の方は、腰まで伸びる綺麗な黒い髪をしていた。

初めて見る帝国では珍しい髪色に見惚れながら、この人も妃の座を狙っている一人に違いないと思った。

だから、妃になるのが夢だと正直に話したら、相手は一体どんな反応をするのか。

敵意を向けてくるのか。それとも、嘲笑うのか。

哀れみの目を向けてくるかもしれない。

普通ならきっとそうだ。

それなのに、お客様は…アニ様は。

笑う事なく、私の夢を肯定してくれた。

“可笑しくない”。

そう目を見つめ、言ってくれた。

貴族でも平民でも、素直で心が清らかな人は珍しい。

だからこそ…なのか、私は自分という存在を認め、受け入れてくれる人とやっと出会えた気がした。