お父様は皇室との強い繋がりを望んでいたから、妃になれば私を見てくれる。
優しい眼差しを向けてくれるのではないか。
そう信じて、配属された部署でも一生懸命頑張っていると、ある日チャンスが訪れた。
陛下が連れてきたお客様のお世話係に決まったのだ。
上手くやれば陛下の目に留まるかもしれない。
妃に……なれるかもしれない。
大切なお客様だと聞いていた相手の方は、腰まで伸びる綺麗な黒い髪をしていた。
初めて見る帝国では珍しい髪色に見惚れながら、この人も妃の座を狙っている一人に違いないと思った。
だから、妃になるのが夢だと正直に話したら、相手は一体どんな反応をするのか。
敵意を向けてくるのか。それとも、嘲笑うのか。
哀れみの目を向けてくるかもしれない。
普通ならきっとそうだ。
それなのに、お客様は…アニ様は。
笑う事なく、私の夢を肯定してくれた。
“可笑しくない”。
そう目を見つめ、言ってくれた。
貴族でも平民でも、素直で心が清らかな人は珍しい。
だからこそ…なのか、私は自分という存在を認め、受け入れてくれる人とやっと出会えた気がした。



