暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》


「アニ様はリリアンの苗字を覚えておいでですか?」

「シェパードでしょ?」

……あれ?シェパードと言ったら…。

「もしかして、シェパード伯爵家の?」

「その通りです。メイドをしておりますが、リリアンはあのシェパード伯爵家のご令嬢のようです」

シェパード家は歴史ある名門貴族の一つだ。

優れた勘と商売の才能で、多くの事業で成功を収めてきただけでなく、良質なルビーの採れる鉱山も持っていると聞いた事がある。

メイドにならなくとも、帝国貴族であれば陛下との接触も少なからずあるはずだけど、何故リリアンはメイドの道を選んだんだろう。

貴族令嬢がメイドとして下働きをしたいなんて言ったら、家族は大反対しそうだけど。

……普通に行かせたところからして、シェパード家は思ったよりも複雑なのかもしれない。