「アニ様はリリアンの苗字を覚えておいでですか?」
「シェパードでしょ?」
……あれ?シェパードと言ったら…。
「もしかして、シェパード伯爵家の?」
「その通りです。メイドをしておりますが、リリアンはあのシェパード伯爵家のご令嬢のようです」
シェパード家は歴史ある名門貴族の一つだ。
優れた勘と商売の才能で、多くの事業で成功を収めてきただけでなく、良質なルビーの採れる鉱山も持っていると聞いた事がある。
メイドにならなくとも、帝国貴族であれば陛下との接触も少なからずあるはずだけど、何故リリアンはメイドの道を選んだんだろう。
貴族令嬢がメイドとして下働きをしたいなんて言ったら、家族は大反対しそうだけど。
……普通に行かせたところからして、シェパード家は思ったよりも複雑なのかもしれない。



