暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》



たまに同じ方向を目指す商人から話を聞いてみたり、すれ違った人とお喋りしたり。


道中色々な事を試して気分を紛らわせなければ、似たような景色に退屈してしまう。


私の里は大通りから外れた山の奥にあって、一緒に歩いて来た人達の全員は真っ直ぐ進んだ先にある大きな町へ向かうとの事。


「お気をつけて!」

「あんたもなー!」


分かれ道で、ここまで一緒に歩いた人達へ声をかける。


問題はここからで、この先からは道が細くなり雑草の伸び切った獣道を進む。


この道を見たら、この先に里があるなんて誰も思わないだろう。


葉の隙間から空を確認する。


この調子だと日没までギリギリー……かな。


日の沈み具合を把握すると、ペースを上げる。


この道を良く知っているとは言え、夜の山には危険が潜む。


遭難する者も多くいるというこの山は、念の為を考えて所々に休憩小屋も建てられている。

とは言え、私はそこで休憩するわけにもいかない。


獣道を行く事二十分。


見慣れた故郷の風景が見えて来た。