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無事に支度を終えた私は、メイド達を連れて外へ向かった。

「おはようございます、陛下」

馬車の周りには沢山の護衛騎士が立っていて、その中心には陛下がいた。

「よく眠れたか?」

「はい、それはもう…」

一緒に使うはずのベッドを一人で占領してしまって寧ろ申し訳ないぐらい。

「その…すいませんでした」

「何故、謝る?」

「パーティーでご迷惑をおかけしただけで無く、あろうことか馬車の中で眠ってしまった私を部屋まで運んで下さったと聞きました」

自らこの件に触れる事は自分の首を絞めるようなものだけど、陛下を前に嘘はつけない。

時々、心の内を見透かしたような発言をされる方だもの。

きっと、はぐらかしても意味がないだろう。

「陛下には沢山のご配慮を頂いたにも関わらず、本当に申し訳ありませんでした」

次は深く頭を下げて謝罪する。

ダンスが出来ない私の為に陛下は講師の方を紹介して下さったのに。

私はその期待に応えるどころか、迷惑をかけてしまった。

これでもしヴィスタン王国との関係が壊れてしまったら、それはきっと私のせいだ。

「顔をあげよ」

陛下の言葉にゆっくりと顔を上げると、鋭い瞳と目が合う。