目が覚めた私は客室のベッドの上にいた。

傍に陛下の姿は無く、カーテンを開けると外はまだ少し薄暗い。

馬車の中にいたはずの私が何故ベッドの上で目が覚めたのか色々と聞きたい事はあるけれど、開けた窓から入ってくる外の空気は澄んでいて気持ちが良かった。

「やっぱり早朝は良いわね〜!」

メイドの時とは違って早朝に起きる事が無くなったので、久しぶりの感覚に思わず嬉しくなる。

風に当たりながら外の景色を眺めていると、後ろからサニーの声が聞こえてきた。

「おはようございます。もう起きていらっしゃったのですね!」

「えぇ、何だか目が覚めてしまって。サニーも今日は随分と早いのね?」

いつもなら空が明るくなってから起こしに来るはずなのに、今日は支度用の水まで用意されてある。

「予定していた時刻よりも出発が早まった為、ご支度に参りました」

「あら、そうだったのね」

普通なら予定が変更になった場合、事前に連絡がありそうなものだけど。

「アニ様がご存知でないのは当然です。昨日は眠られたままお戻りになりましたので」

「え?」

昨日は馬車に乗り込んでから…いや、睡魔に勝てず目を閉じてからの記憶がないとは思っていたけど。


「陛下自らアニ様を抱えられ、それはもう素敵な光景でございました!」

頬に手を当てうっとりとした表情を見せるサニーに対し、私の顔は青ざめていく。

「嘘……よね?」

陛下の前で眠ってしまっただけでなく、そんな私を抱えて下りたなんて。

普通なら処刑されても可笑しくはないのに、こうして生きているという事は……もしかして気にされていないのかしら?

もし気にされていたのなら、寝ているところを叩き起こしていたはずよね。


自分の中でそう納得させると、最初の話へ戻す。


「それで、出発はいつになったの?」

「日が昇り次第との事です」