皇后が亡くなると、皇城内はその座を狙う者達によって荒れ始めた。

始めは寵愛を受けている側妃が皇后になるといった話も出ていたが身分の問題から反対され、それに反発した寵妃支持派と皇后の座を狙う血統重視派が衝突。

死者も続出し、終わりの見えない皇后争いの中、その矛先は次第に俺へと向けられていった。


皇后になる一番簡単な方法は、自身の息子を皇位継承一位にすること。

次期皇帝の母親という立場は一介の妃ですら皇后にしてしまう程の力を持っており、又その様な事を考える者たちにとって、亡き皇后の息子であり皇位継承一位を持つ皇子というのは邪魔な存在だった。

皇后位を狙う者達は様々な手段を用いて俺を消そうとし―――…

「この宮のどこかに皇子がいる!必ず見つけ出して殺せ!!」

最終的には俺の元に刺客が送られてきた。

深夜を狙われたのは、その時間帯なら警備の手が緩んでいるとでも思ったのか、それとも俺が油断していると考えたからか。

自分の意志とは関係なく、勝手に巻き込まれた権力争いに正直疲れていた俺は、このまま終えるのも悪くはないと思った。

けれど、

「皇子様…どうかお逃げください!」

寝室に飛び込んできた使用人から説得させられ、俺は皇城の外へ逃げる事を決めた。

元凶の皇子など見捨てて一人避難すれば良かったものの。

その使用人は外へ通じている裏口近くまで付いて来た後、矢に射抜かれて死んでしまった。

何故あの使用人は俺を助けたのか。

逃げるよう説得したのか。

分からないまま皇城の外へ辿り着いた俺は、刺客から逃れる為にただひたすら夜道を走った。

「皇子がいたぞ!!!」

「くそ…っ」

しかし、数時間も経たないうちに刺客から見つかり、背中目掛けて飛んできた矢の一つが背中に命中した。