俺、リード・フォン・ドミリア・アンディードは皇后の嫡男として生を受けた。

側室の妃が産んだ皇子達もいたが、正室の妃から産まれた皇子と言う理由で、俺は第四皇子にして皇位継承権一位の座を与えられた。

皇后の息子であり、次期皇帝。

それだけ聞くと絶対的な強者のように思えるが、実際はただの肩書にしかならず、皇城内で権力を握っているのは寵妃と言っても過言では無かった。

「…何故、陛下は今日も来て下さらないのっ!?わたくしも皇子を産んだと言うのに…!!」


皇帝には沢山の側室がいたが、中でも一人の妃を寵愛していた。

皇后である母はこの帝国で二番目に権力を持つ存在であったが、皇帝の愛を求めたが故…嫉妬で狂っていった。

「あ…皇子様…。お越しのところ申し訳無いのですが、今は皇后様に近寄られない方が宜しいかと…」

「…分かった。出直すよ」


会いに行く度、母は発狂していた。

次第に母は気力を失い、そして床に伏せるようになった。


「―――…あの人を…愛さなければ良かった」


母は無くなる直前、か細い声でそう呟いた。

死ぬ間際ですら会いに来てくれない。

そんな相手を愛し続けた後悔からだろうか。

声は震え、目には涙を溜めていた。

愛は身を滅ぼす。

女にだらしが無い父と、嫉妬に狂っていった母を見て、俺は誰も愛さないと心に決めた。