「…そのぉ…わたくしは……」

強気な態度を一変させ、何かに怯えるように身体を震わせる王女様。

その視線は、私…というよりもその後ろに向けられている感じがした。

「…いえ、わたくしは何も悪くありませんわ…っ!!あの女がわたくしに生意気な態度をとったのが悪いのよ…!!!」

そう言って、王女様が私を指差した次の瞬間。

───これは冷気?………いや、殺気っ!!?

背後から感じる異様な空気に驚いて後ろを振り向くと、そこには…

「へい…か?」

目に光のない陛下が無言で立っていた。

話しかけても返事は無く、その表情はとても冷たい。

「下級貴族のくせに、王女であるこのわたくしに楯突くから!未来の皇后に無礼を働いたあの女が全て悪いのよ!!」

王女としてのプライドが許さないのか、それとも陛下の婚約者だと未だに勘違いしているのか。

王女様の言動はその場の雰囲気を更に悪くさせた。

「わたくしはただ、身の程知らずの女に躾をしただけ。リード様なら理解して下さるでしょう?」

「最後に言いたい事はそれだけか」

腰に刺さった剣が引き抜かれる。

殺気立った陛下を前に異を唱えられる者など居るはずがなく、そのまま剣は王女様へ向かって振り下ろされる。


───待って、ダメ…!!


「陛下!!!」