訴えるような目で見ると、陛下は楽しそうに口元を緩ませた。
……これ、完全に遊ばれている。
というか、陛下もこういう事するんだ。
「そ…それは失礼致しましたわぁ~…ほほほ…」
「可愛らしいパートナーで…お似合いですわ…」
「わたくしは失礼致しますぅ…!」
女性達はそれぞれ何を思ったのか、そそくさにその場から立ち去って行った。
「…ふっ。…はははっ」
「全く可笑しくないです…!」
「次にまた女達から囲まれたら、この手でいこう」
「~……っ」
私は恥ずかしいだけなのに。
その後しばらくのんびりと会場で過ごしていると、一人の男性が陛下に近寄って来た。
「アンディ―ド帝国の皇帝陛下」
いかにも上等な服に身を包み、顔に笑顔を浮かべながら人当たりよさそうに陛下へ声を掛けて来た男性。
「そなたは、ヴィスタン王国の宰相…アゼル・ヴィーゼンだったか」
「皇帝陛下に名を覚えて頂けていたとは、光栄でございます」
「それで、宰相が余に何の用だ?」
笑顔を絶やさないヴィーゼン宰相とは違い、陛下からは何やらピリッとしたものを感じる。
「我が国王がアンディ―ド皇帝陛下と会談をしたいと申されております。ご案内致しますので、どうぞこちらへ」
「……はぁ、仕方がない」
面倒くさそうにため息をつきながらも、私に向かって手を差し伸べる陛下の手を取ろうとした時。
ヴィーゼン宰相は焦った様子でそれを止めた。
「政治に関する話ですので…どうかパートナーの方はこの場でお待ち下さい」
「………そうか。悪いがここで大人しく待っていてくれ」
陛下は私にそう言うと、ヴィーゼン宰相の後を付いて行った。



