皇帝の弱点は国の弱点にもなり得るから、側近部の者にしか情報が共有されていないと言うのに……うっかり口に出してしまうなんて。
陛下が疑うのも当然の事だ。
幸いなのは、うっかり喋った相手が陛下本人だと言うこと……。
側近部ではないサニー達が疑われる事は無いと思うけれど、側近部しか知り得ない情報と言うこともあって、陛下はその中の誰かが情報を漏洩させたと考えるはずだ。
当然、皆は漏洩させた事を否定するはずだから、そうなると最後に残る怪しい人物………。
……そう。長期休暇を取ってお城に居ない私に疑いが向けられる恐れがある…!
確かに間違ってはいないけれど………取りあえず急いで誤魔化さないと…!
「陛下はコーヒーをお飲みになられる際、角砂糖を使われていなかったので…甘い物がお嫌いなのかと思ったのですが……」
頬に手を当て、とぼけた感じで首を横に傾げる。
晩餐の時に陛下がコーヒーを飲まれている姿を実際に見ているので、可笑しくはない言い訳だと思うけど……見破られていないかが不安だ。
「そうか」
「……へ?」
あまりにもアッサリした返事に、思わず気の抜けた声が出る。
一応、深堀された時の事も考えていたけど………取りあえずその心配はなさそうね。
「お前もあのメイドも…不思議なやつだな」
独り言のようにそう呟く陛下の表情は、どこか寂しそうに見えた。
ケーキを食べ終えた頃、パーティーの主催者である国王の登場を知らせる声が会場中に響き渡った。
「国王陛下のご登場ー!!」
皆の視線が階段上にある扉へ向けられる。
登場した国王陛下はふくよかな体型をした金髪の優しげな雰囲気が漂う男性で、
その後ろには王妃様と思われる女性と、美しい金髪を緩やかに巻いた王女様と思われる女性が立っていた。
「多くの参加に感謝する!!今宵は存分に楽しんでいってくれたまえ」
国王陛下がそう挨拶を終わると、一度静まり返った会場は再び賑やかな雰囲気へと戻った。
ダンスはパーティー後半に行われるようなので、それまでかなり時間がある。
目の前に並んだご馳走をもう少しだけ楽しもうかな〜と呑気に考えていると、
「見つけましたわぁ〜!」
宝石を惜しみなく使った豪華なドレスに身を包んだ王女様が、嬉しそうにこちらへ駆け寄ってくる姿が目に入った。
「……チッ。また面倒な者に絡まれた」
近くで陛下の舌打ちが聞こえてくる。
側にいる私にしか聞こえないぐらいの大きさなので、王女様には聞こえていないと思うけど………。



