聖さんと別れ今日の花束の花を活ける。


今日の花はエキザカム、月見草、ユキノシタ。花言葉は“あなたを愛します”、”無言の愛情”、”深い愛情”。他にもたくさんの愛の花が詰まっている。聖さんからの愛…きちんと伝わったよ。私の思いも聖さんに届いていたらいいな……。


「久しぶりに着てみれば随分ゴタゴタしてるわね。」

「き、キズさん⁉」
「何よ、初めて会うんじゃないんだから少しは慣れなさいよ。」

「慣れるって言ってもいきなり後ろに立たれたら誰でもびっくりしますよ。」


「やっぱりあなたは無防備ね。そんなんだから襲われるのよ。」

「なんでそんなこと知って…。」



「貴方が聖に襲われた時、私ここに来たのよ。貴女と話がしたくて……。それなのに来てみたらどたばたしてて驚いたわ。うちの琉生がまさかここに逃げ込むなんて。」


「私もキズさんに聞きたいことがあります。」

「あら何かしら?」


「キズさんって本当は柚さんですよね…?」
「え……?」


「この間劉磨さんに柚さんの写真を見せてもらいました。そこに入っていた写真は貴女とうり二つの姿だった。それに、花嫁候補としての生贄だと言ってましたよね…?私が来る前に何かがあったんですよね…?」




私の言葉に一言も発しなくなるキズさん。やっぱりそうなんだ……



「悪いけど、私は柚なんて知らないわ。たまたま境遇が似ていたんじゃないかしら?」

「それだけじゃないんです…貴女が柚さんであると思った理由。それは貴女が今ここにいることです。」

「は?」


「貴女が何のかかわりもない人なら入れるはずがないんです。だってこの屋敷は……」







「私たちが結界を張っていますから。私たちの許可なしには入れないつくりになっています。」

「皆さん…どうしてここに…?」



振り向くと悠夜さんたちがドアの前に立っていた。

いつのまに……?


「前から少しずつ結界に亀裂が入っていた。最初は気のせいかと思ったけど劉磨クンの話を聞いて確信したわ。柚ちゃんが戻ってきたんじゃないかって…。」


「ふーん……で、私がその柚さんだとしたらどうするつもり…?また殺そうとするの…?それとも許しを請うの…?」

「やはり怨んでいたんですね…あのときのことを。」

「半殺しの目に合わされたのね、その子。可哀そう。」



「キズさん、お願いです。自分が柚さんであることを言ってください。皆貴女とのことを悔やんでいるんです。もう悔やまなくていいと言ってあげてください。」



「悔やまなくていい…ですって…?馬っ鹿じゃないの?こいつらは一生十字架を背負って生きていくべきなのよ。自分たちの過ちに苦しめばいい。悔やみ続けて一生を過ごせばいい。協会が許したって私は許さない。」




目を見開き吐き捨てるように言う柚さん。伝わってくる恨み、悲しみ、苦しみ。



「ここに来たついでに1ついいことを教えてあげる。近々うちの下僕がここにいる琉生を迎えに来る。それが…貴方たちにとって最期の日になる。せいぜいそれまでを楽しむことね。」



それだけ言うとキズさんは消えてしまった。