「下手にドアとか触らないでね。センサーがついているから。ほら、もうすぐ屋敷の外だよ。」


玄関の扉を開けるとまぶしい光が差し込んだ。


「まぶしい…。」


何日かぶりの太陽はとても暑くギラギラとしている。


「こちらのあまり日差しの無い場所から行きますよ。」

「あんたのことだから、自分のせいで俺らに危害がある…とか思ってんだろうけど、そんな情は要らねえよ。俺らがやりたくてやってんだ。好きな奴のために命をかけられるんだから後悔はない。」


「もう……皆には会えなくなりますか……?」

「うん。多分もう……会えないと思う。でも、思い出は消えないよ。ずっと心の中に残ってる。花月ちゃんの暖かさと優しさ、ずっと僕たちの中で生きてるから。」



これで私は屋敷に帰れる。皆に会える。

嬉しいはず……なのにどうしてこんなに胸が痛むんだろう。すべてが元通りになって幸せなはずなのに。



「時空が……繋がりました。あと3秒といったところでしょうね。」

「3秒…?」




「うわっ!」
「いやん。」


「!?」



いきなり上から降ってきた声と物体。それは聞きなれた声で大切な人たち。



「奏!?泰揮クン!?」

「なんとかついたわね。ここがあの子たちのおうち。大きいわね。アタシたちの屋敷も綺麗にしたいわあ。」

「泰揮、悠長なこと言ってる場合じゃないよ。花月、大丈夫?なにもされてない?」


「私は…大丈夫。」



「あ……アナタたち……約束通り、花月ちゃんをかえしてくれてありがとう。アナタたちのおかげよ。」

「花月ちゃんを…幸せにしてあげてください。」




なんで心が張り裂けそうなんだろう。2人に会えてうれしいはずなのに喜ぶことができない。


「花月チャン、アタシたちの屋敷に戻りましょう。きっと疲れたのよ…まずは帰って休みましょう。」

「そ、そうだ!花月、僕ねテレポートができるようになったんだよ。さすがに異次元空間では迷っちゃったけどテレポートでここまで来れ…」


「そっか…奏はすごいね。」



私はいまどんな顔をしているんだろう。笑った顔?泣いた顔?駄目だ…2人を困らせてはいけない。


「屋敷に…帰ろう。」



李仁さんに時空間に耐えられる薬を貰い時空間へと入っていく。振り返り手を振り、「ありがとう」と言ったとき輝石くんたちは泣きそうな顔をしていた。


でも……笑って笑顔で見送ってくれた。


私なんかのために……黒鬼院様を裏切って……自分たちがこれからどうなるか分かっているはずなのに……



ありがとう。本当にありがとう。ありがとう……皆、大好きだよ。