輝石くんたちの屋敷に来てからもう何日経ったんだろう。攫われたとは思えないくらい快適な生活を送らせてもらっている。することは食事とかの最低限の日常生活と琉生くんたちとのおしゃべりだけだけど、楽しく過ごせている。


でも、あの日以降、橙さんとは口を利いていないし、私の元へ来る回数も減った。輝石くんを通してイヤリングを返してもらえただけでまだ謝ることもできていない。


「花月ちゃん、これ、なーんだ?」
「それって…鍵……?」

「うん!首輪の鍵だよ。」

「外してくれるの……?」

「うん……僕たちでね、黒鬼院様に交渉したの。花月ちゃんを少しだけでいいから自由にしてあげてほしいって……。もちろん外出は禁止だし学校にも行けない。この部屋から出してあげることはできないけど、この部屋でなら何をしてもいいって言ってくれたんだよ!」



私のために……そこまでしてくれたの…?私なんかのために……。




「実はね、黒鬼院様に交渉したとき全員の満場一致の意見じゃないとダメって言われたの。李仁くんとキズちゃんに了解をもらうのって難しいと思ったし正直無理だと思ったの。でも……《彼女は悪い人ではありません。それに自由がない苦しみを与え続けられる苦しみは私が1番知っていますから。》《不本意だけど、あの子はたぶん悪い子じゃない。皆がいいなら私は構わない。》って言ってくれたの。輝石くんも僕もビックリした。ちょっとした賭けに近かったのに実現できたから。でもきっとこれは僕たちの力じゃない。花月ちゃんが2人の心を動かしてくれたからだと思う。花月ちゃんの言葉が2人に届いたんだよ。本心がなかなか見えない2人だから簡単な道じゃない。でも花月ちゃんに心を開いてくれるって僕は信じてる。だから、少しだけ待ってあげてくれる…?」





絶対怒らせてしまったと思っていた。嫌われたと思っていた。でも……少しだけ近づくことができたんだ。


「うん。私に何ができるかなんてわからないけれど……役に立てるのなら……いくらでもぶつかっていくよ。」

「あ、でも、たまには僕にも構ってね。寂しいの……嫌だから。」

「うん、もちろん!」