結局、聖さんに何も言えないまま1日が過ぎてしまった。休憩の時も何回も何回も文字を打ち直したけれど、何て言うべきなのかが分からずメールすら送れなかった。

「花月、大丈夫?」

「平気です。ちょっと喧嘩しちゃっただけですから。」


あずさちゃんと柚さんにも事の経緯を説明した。


「それにしても、花月が緑川くんよりバイトをとるなんて珍しいと思うけど、何かあったの…?」

「内緒でアルバイトしてたこと…バレてしまって……聖さん、すごく怒ってました。でも……何て言えばいいのか…分からなくて。」

「花月は怒ってるの…?悲しいの…?」



私は……あの時なんて思ってたんだろう……。聖さんの悲しい顔を見て私も悲しくなった。でも……どうしても引きたくなくて怒る気持ちもあった。


「今回のアルバイトで……お金を貯めて皆にプレゼントを贈りたかったんです。だから……どうしても仕事…やめたくなかったんです。」

「ごめん……内緒にしてって言ったうちらのせいだよね……。」



「聖には謝ったの?」

「まだ謝れてないです。何をどうやって言えばいいのか分からないし、プレゼントのこともサプライズで渡したかったからまだ伝えたくなくて……。」

「私、明日皆のところに行く予定だから、私から説明しようか…?」

「ううん……柚さんは何も知らなかったことにしてください。柚さんがいたことも分かればきっと柚さんも責められます。」



「花月、電話しな。」
「え……?」



あずさちゃんが私のスマホを奪い操作をしている。見せられた画面には聖さんの電話番号が映し出されていた。


「伝えたくないことがあって、全部言えないことは分かる。でも……1つだけ絶対に言えるのは、嘘ついたことを謝ったほうがいい。花月がバイトをしたことも怒ってるとは思う。でも…1番は、嘘をついて、隠そうとしたことだと思う。花月だったら、どう思う?緑川くんが花月に内緒で…花月に嘘をついて何かしていたら。」

「そんなの……嫌です。」


「言えないことがあるなら言えることだけ言えばいい。だって、こんなことで緑川くんは花月を嫌うような人じゃないでしょ。」

「まあ、私たちが一緒だと言いづらいだろうから、家に帰ったら私たち席を外すからさ、ゆっくり電話しなよ。」

「うん。ありがとう。」


私の中でまとまらない言葉たち。でも、聖さんならきっと分かってくれるはず。


私はそう、思ってしまっていた。