「お店…たくさんあるんだね。」
「だろ?飲食店は多い方がいいからって毎年いろんな出店があるんだよ。」



「ねえねえあれ何!?白くてフワフワしてるよ!」
(聖)「…あれは綿菓子だ。ザラメを使った甘い菓子だ。」

「じゃ、じゃあ、あのフランクフルトっていうのは!?」
「…でっかいソーセージだ。焼きたてだから美味いぞ。食うか…?」

「うん…!」



並んでいるお店の品物は初めて見るものが多くてとても気分が高揚した。



これ、全部食べ物なんだよね……?


「…花月、熱いから気をつけろよ。」
「うん、いただきます。」



聖さんが私にフランクフルトを食べさせてくれる。大きくて熱くて危うく火傷をしそうだったけれど、噛みしめる度に肉汁が溢れてきて口の中に幸せが広がる気がした。



「…美味いだろ?」
「はい!ねえ、聖さんも何か食べましょう。」

「…俺はいいよ。花月見てるだけで腹いっぱい。」

「もう!私、そんなに食いしん坊じゃないよ。」
「…食いしん坊って……ククク。お前が幸せそうに食べてるだけでいいってことだよ。」

「子ども扱いしないで……。」

「…そうだな……じゃあ、手でも繋いで大人っぽいこと…してみるか…?」





「はいはーい!幸せそうな彼氏彼女さん発見―!!!」
「な、何…!?」


いきなり目の前に現れたカメラを持つ男の人たち。いつから見られていたんだろう……それに今彼氏彼女って……?


「我々はベストカップルコンテストを企画している集団、略してBCCT会です。毎年、文化祭の最中に仲睦まじいカップルを見つけ、僕たちが企画したイベントに参加してもらうんですよー。いやー、今年はなかなか良いカップルがいなくて困っていましたが、まさかこんな露店のエリアで素敵な光景を見られるとは……是非とも、あなた方には午後からのイベントにでていただきたい。どうです!?」

「いや、俺らはそういうのじゃなくて……。」


「何を言っているんだね、あんなに見せつけるようにお口あーんだなんてカップル以外の何物でも……って、君、緑川聖くんか!?元空手部主将の。」


「…ま、まあ、緑川聖は俺だけど……。」

「無口だが鍛え抜かれた体を持ち世の男の憧れたる君の彼女だなんて……。」



「世の憧れなの…?」
「…いや…俺は知らない……。」



「いやー、ますますコンテストにでていただきたい。話題にもなるし最高の文化祭になるよ。」

「…悪いけど、俺らは出ない。俺はそもそも興味ないし、花月を見せものにするようなことしたくない。」

「うーん、困ったな……こんなに盛り上がりそうなカップルなんて他には……。そうだ、君からも言ってもらえないかな?参加するようにって。」



「いや、私もその…目立つの得意じゃないので……。」
「残念だなー…いい思い出が作れるかもしれないのに……。」
「思い出…?」



「そりゃそうだよー、だって優勝したカップルには最後に……おっと、これはまだ言えないね。絶対楽しい思い出になるしおすすめなんだけどなー。」



彼氏彼女は…ちょっと恥ずかしい気もするけれど……楽しい思い出……作ってみたい…。



「その……私……出てみても…いいです。」
「…花月!?」


「彼氏彼女…ではないけれど……楽しい思い出なら…作ってみたい……ダメかな、聖さん……?」

「……お、お前が言うなら……俺はいいけど……その……冗談だとか思うなよ。」
「え……?」


「ということでー、さっそく特設ステージに案内するからよろしくねー。」