「あ、花月たちやっときた……って、楓姫!?」

「お久しぶりですね、桃瀬くん。」

「誰かと思ったら病弱姫かよ。いいのかよ、こんなとこ来て。」


「お父様の許可は得ているわ。それに、花月さんとお話ししてみたかったの。」

「久しぶりだな……。」


「昔みたいに楓って呼んでくれないのかしら。許嫁の仲じゃない。」


「いい…なずけ…?」

「親同士が勝手に決めたことだ。それにその話は前に断っただろ。」
「そうね…つい最近のことだったものね…。」



なんだろう…この胸のざわつき。



「花月ちゃん、もしかしてヤキモチ妬いてる?」



ヤキモチ……?モヤモヤするのはそうかもしれないけれど…何か違うような……


「ねえ……せっかくだから花月さんをお友達に紹介してもいいかしら。」

「まあ、楓姫の友達なら……。」



「ダメだ。花月は渡さない。」
「聖…?どうしたの、急に。」


「そんなに焦らなくても大丈夫よ。女の子の友達だけよ。それとも……私が花月さんに何かすると思っているのかしら……?」

「……。」



「それでは、これより競技を開始します。100m走に出場する選手は本部の前に集まってください。」

「さっそく劉磨と聖の出番か。」

「ぜってえ1位とるから見逃すなよ。」
「…すぐ戻るから……どこにも行くな…花月…。」


「聖さん……?」




「へえ…そういうこと……。」


「姫、今何か言った?」

「いえ、何も言っていないわよ。今お友達を連れてくるから待っていてちょうだいね。結愛、一緒に来てくれるかしら…?」

「…承知しました。楓様。」