あの事件が終わってから数週間。長かった夏休みが終わり2学期というものが始まった。


「とうとう……夏休みが明けてしまった……。俺は…もうすぐ死ぬ……。」

「なに、この世の終わりみたいな顔してるの。赤点取らなきゃいいだけでしょ。」

「何かあるの……?」



「休暇明けのテストです。このために、私は貴方に夏休みの間勉強を教えていたんですよ……?」



そっか……テストって1回だけじゃないんだ。



「まあ、夏休み前のテストと比べれば教科数も少ないし楽よね。」

「お前らはいいよな……普段からいい成績だから何の心配もなくてよ…。もし1個でも赤点を取ったら……。」


「取ったら……?」


「体育祭に出られなくなっちまう~!」

「体育……祭…?」



「劉磨が唯一活躍できる数少ない年間行事の1つだよ。初等部、中等部、高等部に分けてそれぞれ1日ずつかけて行う運動のお祭りだよ。僕たちは高等部1年だから、高等部3年の悠夜と泰揮とはライバルになるの。」




体育祭……運動……。それはマズイ…。



「花月、顔が青いけど大丈夫か……?」
「い、いえ、だいじょぶです!運動くらいなんてこと……」


絶対に言えない……運動が大の苦手だなんて……武道とかはなんとかできるけれど、走るのは昔から苦手なんだよな……。



「!!」

「さ、さあ、教室へ行きましょ!」
「さてはお前……運動音痴だな…?」



劉磨さんの言葉に思わず冷や汗が流れる。気づかれちゃいけない…こんな恥ずかしいこと。


「ま、まさか……。できるに決まってるじゃないですか!」



「じゃあ、俺と教室まで競争だ。よーい、ドン!」


「え、ちょ……ま……。」




劉磨さんの掛け声に慌てて走ろうとしたとき————




グキッ


え、グキッ……?



「花月チャン、大丈夫!?」



泰揮クンが駆け寄ってきてくれて、脚の具合を見てくれている。



「骨折はしてないかもしれないけど、軽い捻挫かな……?」

「それなら俺が保健室まで……」



「アタシが運ぶわ。聖クンと奏クンは劉磨クンに後で保健室に来るように伝えておいてもらえる…?悠夜は1限の先生に状況を伝えておいてもらえるかしら。」


「分かりました。また何かあれば連絡をしてください。」