10分ほどかけてたどり着いたのは、「海の公園」と書いてある、その名の通り海のすぐ側にある自然豊かな公園。


「やった。やっと中に入れる」


ここまで来るのに、10分。


ここから家に戻るのに、10分。


今日から散歩の時間は30分だから、10分間ここにいられるということだ。


昨日までは20分だったから、行って帰るのに精一杯で中に入ることは出来なかった。


ふつうの人なら往復20分もかかる距離ではないんだろうけど、わたしに急ぎは禁物だから。


長年染み付いたその癖は取れない。


それでも前と違うのは、これから経過が良ければ普通の人と同じように歩いて、走って、学校に行くことができるようになるということだ。


「がんばったね、わたし」


そう言ってにっこり笑うと、公園を入ってちょっと先にあった休憩所のような海を臨む日陰のベンチをみつけ、そこに腰掛けた。