(3,2,1…)


カチッ。


小さな音と同時に、長い針がまっすぐと12を指した。


短い針は5のところ。


(よし、5時!)


机の上に用意してあったつばの大きな麦わら帽子をかぶり、白いショルダーバッグをデニム地のワンピースの上からかける。


肩下までの髪を手ぐしですくと、一つ一つしっかりと個包装されているマスクの袋を破って、顔にあてがった。



「お母さん、行ってきます!」



「あっ、待ってひなた。」



料理をしていたお母さんはすぐに手を止めて、パタパタと玄関までやってきた。



「うん、マスクはしてるね。お薬持った?」


「うん、持った」


「スマホは?」


「持ったよ。今日から30分お散歩だから、5時半に帰るね!」


「分かった。気をつけて行ってらっしゃい」


行ってきます、ともう一度言ってから、わたしは外の世界に踏み入れた。