ため息をつきつつ、

一人で歩いていたら、

「れいちゃん!」

ドンと軽く背中に衝撃があって、

首だけ捻って後ろを見ると、

桃奈さん。

「も、桃奈さん?」

桃奈さんは首だけ振り返った俺の首に、

今度はネクタイじゃなくて、

自分の腕を絡めて、

「今日、そばにいてくれてありがとう。はるちゃんに気を使わせなくて済んだ、…本当ありがとう。」

と耳元で呟く。

ちゃんと振り返って、

顔を見ようとしたら、

もう桃奈さんの手は離れてて、

「桃奈!」

って洸さんの声が聞こえて、

桃奈さんが走り出す。

ちょ、

とっさに腕をつかもうとした手は宙を切って、

俺1人残される。

…ったく、あの人ほんとずるい…。