桃奈さんがまた急に帰る準備を始めて、

サブアリーナから出てくから、

絶対いろんな男に声かけられると思って慌てて後を追う。

まぁ案の定で。

なんとか手を繋いで2人並んで歩いてるわけだけど…

本当に鈍いし、

手を繋いで向かう先は、

ライバルである洸さんの家だし。

でも、横で今日の話を嬉しそうにする桃奈さんみてたら、

どうでもよくなる俺も結局もう引き戻せないところまで来てて。

「れいちゃん、本当に今日はありがとう!明日も頑張ってね!」

あるマンションの前でそう言われて、

ここが洸さんの家なんだと思う。

…あっという間に。

「いつ、終わるんですか?」

離れ難くて声をかける。

「んー、わかんない!はるちゃんが打ち上げから帰る頃には家にいようと思うけど!」

「そうですか…」

「れいちゃんも打ち上げ楽しんでね!」

…打ち上げも楽しみだけど、

こうやって話してたい。

「れいちゃん…これありがとう。」

桃奈さんが俺の首に手を伸ばす。

ネクタイを外そうとしてるのはわかってる…けど、

今日いつもより近づけた気がした桃奈さんがまた離れる気がして、

「…まだ、つけてたい。」

気付いたらそう口にしてた。