手を引かれながら、

後ろからみる桃奈さんの背中は

いつもより小さく見えた。

「桃奈さん、休憩しよ。」

今度は、俺が桃奈さんの手を引くと、

桃奈さんは黙ってついてくる。

そのまま部室棟の裏の影にしゃがむと、

桃奈さんもゆっくりしゃがむ。

沈黙。

たぶん複雑な気持ちなんだろうなぁ。

遥が離れていきそうな…

でも離さなきゃいけないって、モヤモヤしてるんだろう。

カーディガンをそっとかけると、

「…れいちゃん怒るからいらない。」

といつもより幼い声が返ってくる。

「怒んない。てか、怒ってないです。」

「嘘つきだ。…私が1番。」

小さく見えた背中が、

さらに小さくまるくなる。

邪魔しないように、つい持って出た制服のカッターを羽織る。

「れいちゃん、ありがとう。」

「何がですか?」

わからないフリして聞けば、

制服に着替えて、ボタンを止めた俺の首に、

桃奈さんがポケットにしまった自分のネクタイを通す。

ネクタイを自分のとは違って手際良く結んで行く。

俺の首には桃奈さんのネクタイ。

「ずっと変わらないなんてありえないよね。お願い、れいちゃん…今日は…」