合宿も終わって、学校から家までの帰り道、

茉由と2人になる。

今…か。

「茉由、俺桃奈さんと付き合い始めた。」

「…知ってる。何。」

茉由はいつもよりツンとしてて、

「いや、幼なじみにちゃんと改めて報告したかっただけ。」

そう返すと、

立ち止まる。

「幼なじみ…ね。」

茉由は寂しそうに言うけど…

俺はその背中を抱きしめたりはしない。

「幼なじみってずっと思ってるのは玲司だけじゃん。」

「…」

茉由は黙る俺をみて、

しばらく黙って、

「あーぁ、やめやめ!もー悔しい!」

と大声を出して歩き出す。

「玲司、ちょっとでも悪いと思うならクレープ買って!!」

「は?」

「クレープくらいいいでしょ!これからもクールで冷たいあんたの幼なじみでいてあげるんだから!」

俺が茉由の顔を見ると、

背中に回られて、俺の背中を押してクレープ屋のほうに向かわせる。

一瞬見えた茉由の顔は、

昔よくみた泣き顔で、

少し胸が痛くなったけど、

「…逃した魚は大きいんだからね。」

なんて鼻をすすりながら言う茉由に、

「…なんとか捕まえた魚はそれより大きいから。」

と返すと、

「ムカつく!ほんっと可愛くない!あーもう!」

「茉由、…さんきゅ。」

「ふん!次は私を溺愛してくれる彼氏を連れてあんたをギャフンと言わすんだから!」

なんて言葉が返ってくる。

久々に2人で並んでクレープを食べて、

茉由に心から感謝した。