…可愛いなぁ。

さっきまですごいかっこよかったのに。

「桃奈さん、次も勝つから。見てて。」

またまっすぐな瞳に捕まる。

…もう逃げない。

私は小さく深呼吸して、

「ちゃんと見てるよ。れいちゃんを。」

見つめ返して、そう伝える。

れいちゃんはキョトンとする。

「え、ちょ、え?」

珍しく動揺するれいちゃんに、

もう逃げないと決めた私は、

「…見てるから絶対勝って。」

そう続けると、

れいちゃんは力強く頷く。

「さらにやる気出た。負ける気しないです。」

と笑って、

「戻りますか?」

と私が走ってきた道を戻ろうとする。

「れいちゃん!」

呼ばれて振り向くれいちゃんの腕を頑張って引いて、

精一杯背伸びして、

頬に口付ける。

「れいちゃん、頑張って。」

その姿勢のまま、また固まったれいちゃんにもう一度頬に口付けして、

「勝ったら…今度デートして?」

なんて、自分勝手な他人任せなお願いをした。

顔は真っ赤だと思う。

でも心はスッキリしてる。

…これが私の決意だから。