「泣かせるつもりはなかった。俺自身に苛々してて…当たった。」
「なんで…」
さっき触れられた頬に手を当ててきく。
「なんでって言わないと気づかない?…ずっと前から綾の弟なんかよりずっと前から桃奈が俺の中で特別だからだよ。」
…。
「ごめん…なさい。」
「なにに対して?」
「気づかなかったことで洸を傷つけたこと…と、それから、気持ちに応えられなくて…」
沈黙。
「俺にはすぐに返事できるのに、なんで綾の弟は保留なの?」
分からない…
何か答えないと、
考えるけど…
「ごめんなさい、自分のことなのに自分がまだ1番わかってない…。」
「…そっか。怖がらせてごめん。明日からまたいつも通りでいい。だから、避けないで欲しい。」
避けるわけないと首を振る。
「伝えてくれてありがとう。」
二人でまだ帰り道は途中なのに、
握手をして別れる。
私が泣くな。
そう言い聞かせるのに、
ちらつき始めた雪と一緒に、
静かに頬を冷たい水が落ちていく。
どうしてこんなに自分のことが分からなくて、
自分のそばにいてくれる人を傷つけるんだろ…

